もくじ
不等辺三角形
生け花で基本となる三角形が、「正三角形」「二等辺三角形」だと、生花の美しさを十分表現できません。
バランスが良いだけでは、花の持つ生命感や自然の伸びやかさなどを引き出すことができないのです。
そこで、生け花ではアンバランスな美しさを持つ「不等辺三角形」を構造上の基準にしています。
花が持つ美しさを表現するには、シンメトリー(左右対称)よりもアンバランスの美しさのほうがより適しているのです。
傾斜について
実際に花器にさして形作る段階になると、いける角度が問題になってきます。
それぞれの花材が基準の寸法に会うだけでなく、その一本一本が異なった傾斜角度を持って、空間に立体的な不等辺三角形を形作ることが大切です。
例えば、右に刺す花の傾斜の角度が浅ければ、反対側は深くすると言ったように、角度を変えていくと、不等辺三角形はより立体的になり、美しいバランスを作り出せます。
花器と花材の割合
普通は、長さのバランスを取る方法としては、下記に対して、主役になる花の長さの寸法を、約1.5倍にとると、花器と花材のバランスが取れます。
これを基準とし、脇役の枝を主役の枝の【3分の2】か【2分の1】に、三本目の枝を更に、その【3分の2】か【2分の1】にとっていくと、美しいプロポーションが出来上がります。
(投げ入れの場合は、一番長い枝が、花器の高さ+幅の1.5倍から2倍が目安。)
枝をすかす
同じ方向に伸びた枝や、同じ形に見える枝は重複を避けるために切り落とします。
同じくらいの強さの枝が何本もあると、互いに個性を殺し合いますから、一番良い枝ぶりを中心にして整理します。
どの枝を残すかは、個人個人のセンスと見極めによります。
始めは迷いますが、失敗を恐れず大胆に行いましょう。
枝の密着や交差を避ける
良い枝ぶりだからといって、枝と枝の間をあまり近づけてはいけません。
適当な間隔を取り、主になる枝と小枝の変化をはっきりさせます。
また、基本的には交差した枝はタブーで、事に直角に交差する枝は必ずキリトとします。
ただし、往査した枝の特徴をあえて活かすこともあります。
葉に変化をつける
葉が多い枝をそのまま生けてしまうと、主苦しい感じになってしまいますし、枝全体に同じ調子で葉が付いていたのでは変化がありません。
不要な母整えましょう。
葉の整理や、生け上がってからも全体のバランスを見て行います。
葉の有り様は作品全体を左右しますから、細やかな心遣いが大切です。
切り方
草花の切り方
やわらかい草花類は、原則としてハサミの刃先を使い、直角に当ててかります。
ただし、木が太い場合は傾斜させるので、直角でないこともあります。
また、茎に節のある草花は、節と節の間を切らずに、節の下で切ると剣山に留めやすくなります。
木ものの切り方
太さにかかわらず、刺す方向にしたがって斜めに切ります。
ハサミは大きく開き、歯の奥で切ること。
一度で切れないときは、ハサミをぐるぐる回しながら切るのがコツです。
こうするとかなり太い枝でも、切ることができます。
根本の割り方
木ものは、剣山に刺しやすくするため斜めに切りますが、そのままでは不十分です。
より刺しやすくするため、予め根本を割っておきます。
根本は太さに応じて数多く割っていきますが、普通なら十文字で十分でしょう。
ためのテクニック
思ったとおりのカーブが付いた枝や茎というのは、なかなか手にはいりません。
もう少し曲がっていれば、上手にまとまるのに、、、とか、枝同士が交差して困ってしまうことがよくあります。
そんなときに、枝や葉を人工的に曲げたり伸ばしたりするのが「ためのテクニック」です。
押しため
小指くらいの小枝に用います。
曲げたい方向に両手の指を揃えてあてがい、腕を体につけて、ゆっくりとねじるようにすると、折れずにためられます。
ポイントは、一気にためず、ゆっくりと何度も繰り返すこと。
また、一箇所に限らず、数箇所でためたほうが仕上がりの線が自然です。
剣山の置き方のポイント
2:円・四角の花器では、四隅のうち何れか。。
3:短冊形は左右のいずれか。
4:口のさほど広くないコンポートは中央に。
剣山は花を刺すだけでなく全体を支える役目もします。
花がおもすぎて倒れそうなときは、2つの剣山を噛み合わせて使います。
花材を剣山に刺す
草花や小枝を刺す場合
原則として、好みの方向、傾斜角度に従ってまっすぐに差し込みます。
ごく細いものは、剣山に留まらないので、根本に神や葉を巻いて補強します。
また、あじさいのように茎が細く頭が重い花の場合などは、添え木をしなければなりません。
添え木は、他の花材で目立たないようにカモフラージュをしましょう。
空洞のある茎を刺す場合
アマリリスなどのように、内部に空洞のある草花は、まず空洞に入る太さの枝を切って剣山に刺し、その上からすっぽり被せるようにします。
空洞があっても茎に節のある花の場合は、節のすぐ下を切りさします。
また、根本を折り曲げる、脱脂綿を巻く方法もあります。
草花をたくさん刺すときは、根本をハリガネ・ワゴム・ワラ・ヒモなどでくくることもあります。
木ものを刺す場合
生け花は、枝を傾けて刺すことが多いのですが、最初から傾けては刺しにくいので、始めはまっすぐ刺し、それから傾けます。
刺す場合は、剣山の針と針の間に切り口を差し込み、手応えのあるところまでまっすぐ差し、根本を押し付けながら好みの方向に傾けていきます。
こうすると、傾く側の皮のつぶれた部分が針に刺さって、止まりやすくなります。
太い木ものを刺す場合
木や枝は、必ず根本をタテに十文字に割ってから刺します。
幹が太くなるに従って、十文字より多く割っていきます。
また、太い木ものを垂直に刺す場合は、かなりの力がいりますので、根元を円錐状に切ります。
四方を削ると、刺す範囲せまくさしやすくなります。
投げ入れの留め方
十文字留め
花器に仕掛けをする方法。
花器に十文字の留め木(割り箸)をわたし、花材をもたれさせます。
主として、筒型の花器に使います。
また、口の広い花器やガラス器には、針金を丸めていれ、それに花材を差し込む方法もあります。
ガラス器は外から内部が見えるので、見た目がキレイな針金がよく使われています。
縦の割り留め
細長いツボのように方に膨らみのある下記の場合には、花材の根本を2つに割り、方から底の長さくらいの添え木にタテに挟み込むか、しばりつけます。
こうすると、花材が花器の縁に当たるので3箇所が支えになり、安定します。
横の割り留め
花器に刺す花材の根本を2つに割り、花器の口径くらいの短い横木を挟み込んだり、結びつけて止める方法です。
こうすると、花材の根本の横木(かんざしと言う) の両端が花器の内側に当たって固定することができます。
主として、横の割り留めを使うのは、頭の重い花を傾けて刺すときなどに用いられます。
また、花を真っ直ぐに立てたいときは、花器に刺した部分の中ほどに、横木を結びつけ、ちょうど十文字のようにします。
切り留め
花材を斜めに切り、根本を花器の内側に、くっつけ、一方を花器の縁に密着させて止める方法です。
折り留め
花材を手で折り曲げて、支えにする方法。
花を折り曲げると元に戻ろうとする反発力が働きますので、この力を利用して留めます。
手で曲がりづらい木ものは、カナヅチや剣山の背などで、2箇所くらいを潰し、花器の内側や底に沿って折り曲げます。
その弾力を利用して花材を安定させるのですから、当然、弾力のあるものほど、よく留まります。
また、花材によっては、図のように斜めにハサミを入れ曲げていきます。
その他の留め方
花材を止める道具としては剣山の他に「鶴の巣」というものもあります。
これは花器と花材の両方に仕掛けることができ、しかも初心者にも簡単に使えるので便利です。
「鶴の巣」は、3mmほどの過巻線ですから、自由自在に曲げられます。
これを花材の根本に巻きつけて使用します。